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年賀状を目指す

一部上場企業でさえ、不安にかられるような物件。
だが、Nには「売りきる自信」があったときっぱりいう。 「なぜ、そこまで自信がもてたのか」私は、Nにたずねてみた。
Nの答えは″天晴れ″といいたくなるほど、明快だった。 「自信そのものが自信です」というのである。
目の前にあるのは、草ホウボウ、風雨に打たれ、荒れすさみ、汚れきった建物だ。 しかし、Nの目には、きれいにリュューアルし、いきいきと蘇ったマンションの完成像が、はっきりと見えていた。
もとはといえば、7、8年前、まぎれもなく″億ション″として計画された、一戸あたり50〜60坪もある高級マンションなのだ。 総工費72億円、用地代を算入すれば、100億円近いお金が動いたはずの、豪華絢爛たる物件のはずだった。

いま、その価格は、最盛期の半分を大きく下回る。 仙台市民の間に、非常によく知られた物件であることも、Nが「これならいける」と確信する理由の一つになった。
「仕入れることを決定するまでに、何回か仙台に足を運びました。 たいていは、売り主側のスタッフが車で案内してくれたのですが、2、3度、あえてタクシーに乗ってみました」Nが目的地を告げるとタクシーの運転手は「ああ、あの億ション?」とか、「あのお化け屋敷になんかあるんですか?最初は仙台にも億ションが建つとずいぶん、話題になったんですけどね」などと話に乗ってくる。
あの物件は億ションというイメージが、仙台の人々の脳裏にくっきりと刻まれているのである。 「不動産の専門家の目ではなく、街の人たちの目のほうがずっと正しいことが多いものなのです」(N)。
躯体、設備などを調べると、放置されていたという印象とは裏腹に、行き届いた管理がされており、一部を補修すれば十分機能することもわかった。 なによりも、もともと億ションという企画であっただけに、立地も建物のグレードも非常に高い。
これが決め手になった。 原価計算をすれば、適正な利益をのせても3000〜5000万円で分譲できる。
億ションになるはずだったマンションが、3分の1程度の価格で買えるのだ。 こうしてNは、当時のT建設の事業規模からすれば、かなり無理な投資であることを百も承知で、この物件を一部上場企業から買い取った。
Nはこういってはばからない。 「正直にいって、当時のわが社の身の丈を超えた物件だという自覚はもっていました。

でも、リスクが大きければ大きいほど、ゲインも大きくなるんです。 こういうと投機のような印象をもたれるかもしれませんが、投機はその後の動きは他人任せ。

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